秋の企業見学会
  ― 時計と紅葉と酒と ―

  八王子支部  2002.11.01

 前日の快晴とはうって変わり、寒くどんより曇っている11月1日(金)、翌日は又快晴という予報にいささか滅入っていたが、乗車中多少の小雨はあったものの、到着の先々では殆ど降られず、持って来た傘を「不用だったな」ともてあましても居た。
標高1050米の八ケ岳の周辺は見事な紅葉で八千草とのハーモニーは格別。
危ぶまれた参加者も新参4名を加えて26席が満杯。
双葉SAの小憩までの一時間半、自己紹介に笑いの渦が巻く。
(蔵前人て奴は実にお喋り好きが共通で、いつぞやは出発が一時間遅れとなったこともあり)

 セイコーエプソン塩尻事業所の案内役 生産部長 太田 勉氏は同じ蔵前で、開口一番、大半は中国へ移設して空洞ですと申し訳なさそうに話し始めるが、顔はにこにこ笑っている。
内実はとっておきの手造りのすごい時計を造っているのだ。
その一つ、スプリングドライと命名されているものは、ゼンマイの動力で発電しながら自らの回転速度を電子制御し、電源がないから電池交換も不要。まさに精密加工技術と電子制御技術が高いレベルで融合した商品。
早速に見学に赴くと若い男女の技能士(一級取得)さん達が真白の作業衣に身を包んで大きな顕微鏡をのぞきながらせわしなく手を動かしている。

「かなりきつい作業だと思うが実働は?」
「7時間です」「休憩がなければねえ」
「勿論あります」
「どの位?」
「3回ありまして、一回が2分30秒です。」
「えっ?」係長は平然としている。(さすが時計工場だな、2分30秒ときた)

この2分30秒がかなり後までひっかかったが多分最も効率のよい時間なのだろう。

 名古屋から回って合流するという大先輩中沢道彦氏(16年窯業)が待っているだろうと諏訪湖畔華の井ホテルへと直行する。
居た居た。
いつもの草履と和服姿の出で立ちで白内障、胆石手術直後とは微塵も思えないタフな人。
女中さんがしきりに入湯を勧める。釜飯が炊けるのに30分かかるという。
考えてみるとうちの支部は東電地下発電所といい、ロボット工場、信越化学工場といい、いつも温泉がセットだったと湯に浸かりながら思い出す。
余り飲むな、これから銘酒真澄を存分に飲むんだからと制しつつも上機嫌で諏訪下社を詣で「御柱」の小さいのにがっかりしながら宮坂醸造に乗り込む。
これが今年の新作ですと「7号」という酒、しかし妙な命名だなと口に入れるとこれが実に芳醇。
中庭に能舞台の鏡板とそっくりの松があって、「裸足で舞いたくなる」と、支部長。
御当主宮坂伊兵衛氏は本学21応化の卒業で「これを皆様で車中の足しに」と銘酒を頂いた。その吟醸酒が帰着まで利いて車中酩酊。

 中沢氏合流の目的は、日本の民芸運動の火付け役浅川兄弟の記念館が八ケ岳山麓高根町にできたから参観しようということである。
浜田庄司、芹沢蛙介、柳宗悦らを奮い立たせた浅川兄弟の思想的背景と主張を客観的ではなく後押ししている記念館は感動そのものであり、館を作った人達の勇気に心から敬意を表するものだった。

 茜色に染まった八ケ岳を横目で見ながら暮れなずむ甲州路を一路八王子へ向かい、定刻6時40分にぴたりと帰り着いたのだった。

 この見学会に尽力を賜った本部広報の守友氏、宮坂氏に心からお礼を申し上げます。

(幹事、42応物 陣野孝光文責)